カニの味は凍結方法によっても変わる? カニ選びに役立つ、豆知識をご紹介します!
皆さん、カニを食べたくなったらどうされていますか?
以前はわざわざ北海道に旅行へ行って食べたりしなくてはなりませんでしたが、今や24時間いつでもネットから購入出来る便利な時代になったものです!
しかしいざネットで購入しようとすると、レビューで「塩辛い・外れだった」などの感想が書かれており、躊躇してしまうこともあると思います。
もちろん生きている天然のものなので、個体差があるのは当然なのですが、こういった差は凍結方法によっても違いが出てくると知っていましたか?
今回は皆さんのカニ選びに役立てて頂けるよう、凍結方法のアレコレを考えてみたいと思います!
目次
凍結方法による違い
カニの凍結方法? 凍結方法とか言ってるけど、冷凍庫に入れれば凍るでしょ?
そんな声が聞こえてきそうですが、凍結と言っても結構奥が深いんですよね!
凍結方法によってどういった違いが出て来るのか? 簡単にご紹介していきたいと思います。
細胞の破壊が起きるか? 起きないか?
凍結のお話をしているにも関わらず、いきなり細胞とか言い出して情緒不安定感がありますが、こちらがかなり重要なんです!
こちらの表をご覧下さい!
こちらを見ても何のこっちゃと言った感じだと思いますが、凍結する温度帯によって細胞の破壊がどれだけ起きてしまうのか? と言った図になります。
オレンジの線の【緩慢凍結】とは、マイナス20-25℃程度の温度帯の冷凍庫での凍結。
ブルーの線の【急速凍結】とは、マイナス40-50℃程度の温度帯の冷凍庫での凍結。
の事を指します。
凍結をしますと、図の紫色で示されている0℃~マイナス5℃の温度帯で氷の結晶が大きくなっていき、細胞の破壊が起きてしまいます。
細胞の破壊が起きますと、身質が悪くなったり、解凍をした際に身に詰まっている旨味成分が解凍と同時に抜け落ちてしまいます。
なので、凍結する際はこの0℃~マイナス5℃の温度帯をいかに早く通過出来るかが重要になってきます!
図から分かるように、より低い温度帯で凍結をした方がこの0℃~マイナス5℃の温度帯を早く通過するので、凍結した商品の品質がより良くなることがお分かりになると思います。
食品業界ではこういったことが当たり前となっているので、流石に今の時代に【緩慢凍結】をしている会社はないと思いますが、皆さん工夫を凝らし、より良い品質を目指しさまざまな凍結方法を行っているのです!
カニの凍結方法
では実際にどういった方法でカニを凍結しているのか?
主に2つの凍結方法が主流となっていますが、今回は3つの方法をご紹介致します。
エアブラスト凍結
1つ目はエアブラスト凍結です!
こちらはマイナス40℃以下の冷気を吹き付けて凍結する方法です。
先程の図にもあった【急速凍結】と呼ばれる凍結方法になりますね!
大きさや形状などによっても異なってきますが、こちらのエアブラスト凍結ではカニの中心部までちゃんと凍らせるためにはおおよそ半日から1日程度かかります。
ブライン凍結
2つ目はブライン凍結です!
こちらは一般的にイメージする冷凍庫で凍結するのではなく、溶液に漬け込んで凍結する方法です!
溶液で凍結って、溶液も凍るんじゃ……?
そんな疑問も浮かんできますが、この溶液は食塩や塩化カリウム溶液から作っているものなので、この程度の温度帯では凍ることもないのです!
このブライン溶液を-40℃まで冷やしてカニを凍結することによって、熱伝導率が空気(エアブラスト凍結)よりも20倍も増し、素早く凍結することが出来ます。
こちらも大きさや形状などによって異なってきますが、1-3時間程度でカニの芯まで凍らせることが出来ます。
超低温凍結
3つ目はカニの凍結においてはあまり行われることはありませんが、更に低い温度帯で凍結させる超低温凍結です。
こちらは色々なメーカーが色々な技法を使用して発表しているので、一概には言えないのですが、敢えて言うならば【液体窒素】や【液化炭酸ガス】を用いた凍結方法になります。
液化炭酸ガスは約マイナス76℃で凍結、液体窒素にあたってはマイナス196℃もの異次元の温度帯で凍らせることが出来ます。
商品の品質のことだけを考えるのであれば、こういった凍結方法をするに越したことはないのですが、いかんせんこういった方法はコストがかかってしまうのが問題点です。
そのことからあまり行っている業者さんは少なく、通常出回っているカニで採用されていることはほとんどないように思います。
それぞれの凍結方法
ここまででどういった凍結方法があるのかはお分かり頂けたかと思います。
しかし重要なのは、この凍結方法によってカニの品質自体にどういった違いが出てくるのかですよね?
ここでは何故メーカーによって凍結方法が異なるのか? またどういったことがメリット・デメリットになってくるのかをお伝えしていこうと思います。
※前述の通り、③の超低温による凍結はあまり主流ではないので、ここではエアブラスト凍結とブライン凍結の2つだけに絞りたいと思います。
何故凍結方法が異なるの?
それぞれの凍結方法を見ますと、何となくブライン凍結の方が優れていると感じると思いますが、では何故全てのカニがブライン凍結で冷凍されていないか疑問ですよね?
それを説明するに当たってはそもそものカニの漁獲から製造にまで遡る必要があるのです。
カニは北海道や日本海側でも水揚げがされていますが、一般的にネットで販売されているカニはロシアやアメリカなどからの輸入品がほとんどになります。
※日本で水揚げされる国産のカニ類は高級な料亭や地元の旅館などで消費されることがメインなので、今回は一旦除外します。
そこでこの2つの国に焦点を当てますと、ロシアで水揚げされたカニは水揚げされてからすぐに船の中で加工されるのです。
「船の中で冷凍するの~?」なんて思う方もいらっしゃると思いますが、やっぱり日本とはスケールが違いますので、とんでもない大きさの船でやっているんですよ!
なのでロシア産のカニは船の中で加工されるので【船凍品】と呼ばれます。
一方アメリカでは漁獲されたカニは一旦陸上の加工工場へ持ち帰り、加工を行います。
こちらは【陸凍品】と呼ばれます。
ここで違いが出てくるのですが、ロシアの船で生産される【船凍品】は船自体が大きいとは言いましたが、おおがかりな装置であるブライン凍結の機械を船に設置することができないんですよね。
一方アメリカでは陸上の工場になるので、ブライン凍結の機械も設置することが出来るのでブライン凍結で商品を作ることが出来ます。
このことから……
ロシア産-船の中で作られ、エアブラスト凍結
アメリカ産-陸上の工場で作られ、ブライン凍結
こんな感じに分けることが出来ます。
ブライン凍結の方が品質的にも向上しますし、何より工場側のメリットとしましては、凍結する時間が短くなり、たくさんのカニを加工することが出来ます。
しかし船の中と言った環境からこういった違いが出てきてしまうんですよね。
中にはどちらの国でも例外があるのですが、基本的にはこんなイメージになりますかね。
※気になる方は商品の詳細を確認する、またはお店に問い合わせをした方がいいですね!
日本国内でもボイルをしていない冷凍のカニを買い付け、自社でボイル製品を作っている会社もありますが、こちらは会社によって凍結方法は全く違う印象がありますかね。
それぞれのメリット・デメリット
って、ことは「アメリカ産のカニを買っておけばオッケー?」と、なりそうですが、そうとも限らないんですよね……。
ブライン凍結は前述の通り、食塩や塩化カリウム溶液に漬け込むので、甲羅があるとは言えど、身にも塩分が染み込んでしまうんですよね。
他にも理由はありますが、「カニが塩辛い」となるのは、これが大きな理由になります。
なのでブライン凍結で作ったカニには、結構な確率で「解凍してからカニを水に漬けこみ、塩抜きをして下さい」と書いてあると思います。
中々上手くいかないもんですね~……
しかし今では色々と調整され、そこまで塩辛くないブライン凍結のカニも出てきているので、そんなに気にしなくてもいいのかもしれません。
一方、エアブラスト凍結のデメリットとしまして、中心部まで凍結するのに時間がかかってしまうと言うことです。
時間がかかるのは私達消費者には関係のないことのように思いますが、少なからず細胞の破壊などで品質が落ちてしまうのです。
しかしこちらも、超絶美食家の人が食べれば判別がつくのかもしれませんが、私みたいな一般市民では分かりえない代物であると思います……
ブライン凍結-細胞の破壊は起きにくいが、カニが塩辛くなる可能性あり
エアブラスト凍結-ブライン凍結と比較すると細胞の破壊が進んでいる
なので、どちらにも少なからず良し悪しがありますが、そこまで気にするような事でもないのかもしれませんね。
えっ、これだけ長々と語っておきながら結局はそれが答え?
罵詈雑言を浴びせられそうですが、人間なんてこんなものです(笑)
美味しいと思い込めば、何でも美味しく感じるものですよっ(笑)
はい、ホントすいません。
まとめ
- カニの凍結方法は3種類
- 主な凍結方法はエアブラスト凍結とブライン凍結の2種類
- 凍結は0℃~マイナス5℃の温度帯が重要
- ブライン凍結は塩辛くなる可能性あり
- 結局はどちらの凍結も、そんなに気にしなくておけー♪
いかがでしたでしょうか?
最終的な結論を「そんなに気にしなくていいですよ」としてしまいましたが……
しかしですね、自分を擁護するワケではありませんが(する気マンマン)、凍結方法によって、身質が味に違いが出てくることには間違いがありません。
またこういった情報を知っておきますと、購入時に気を付けたり、予防策が取りやすくなってくると思います。
この記事が無駄な記事ではなく、皆様にとって有益な情報となっていることを願い締めさせて頂きます(笑)